



キシリ キシリリ キシリリ キシリリ
托鉢の新雪を踏みしめる音が何とも心地よく。
歩を進める至悦の時音。
托鉢の左手には応量器(雲水の食器)の頭鉢。
50年も前、安居(修行)の時からの持鉢。
50年も前には粥や飯が盛られ、
以降40年余りは托鉢に。
擦ったつもりもないのに漆は剥げ、
思わず落とし割れの後、痛々しくともいとしさます。
頭鉢、涅槃会にはおみみ団子が山盛りに。
鈴(れい)は持ち手だけ磨かれたように光る。
もったいなくも40年の手跡。
托鉢道中、鈴の音に春を感じ心安心になりますと聞く。
まさに涅槃托鉢は我がするに非ず、
応量器が托鉢する。
鈴が托鉢する。
唱えるは延命十句観音経。
その経音は托鉢の我を離れて
釈迦の、観音の静かな波ならんか。