40年の手跡

キシリ キシリリ キシリリ キシリリ 

托鉢の新雪を踏みしめる音が何とも心地よく。 

歩を進める至悦の時音。 

托鉢の左手には応量器(雲水の食器)の頭鉢。 

50年も前、安居(修行)の時からの持鉢。 

50年も前には粥や飯が盛られ、 

以降40年余りは托鉢に。

擦ったつもりもないのに漆は剥げ、 

思わず落とし割れの後、痛々しくともいとしさます。 

頭鉢、涅槃会にはおみみ団子が山盛りに。 

鈴(れい)は持ち手だけ磨かれたように光る。 

もったいなくも40年の手跡。 

托鉢道中、鈴の音に春を感じ心安心になりますと聞く。 

まさに涅槃托鉢は我がするに非ず、

応量器が托鉢する。

鈴が托鉢する。 

唱えるは延命十句観音経。

その経音は托鉢の我を離れて 

釈迦の、観音の静かな波ならんか。

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諏訪 普現

昭和24年10月1日 小田原にて生まれる。6才から武生の庵寺で育つ。昭和53年28才福井市霊泉寺住職。翌年、鯖江市長禅寺兼務住職。昭和62年から平成元年にかけ、禅林寺、長禅寺同時期に本堂再建。平成2年より武生市金剛院、福井市禅林寺住職。同時に伝道掲示板書き始める。平成30年、禅林寺に慈恩立ち直り観世音石像建立。 現在、福井刑務所教誨師。