金剛悲心観世音開眼「俳句」投句大会

六呂師から深草へ移住されて

福井県、越前市としては、立ち遅れぎみの文化の領域拡充も含めており、鎮座の暁には、市民の皆さんは勿論のこと、また越前市へおいで下さる皆々方にも心から愛され、ご満足頂ける参拝地として生まれ変わる都市に必定を信じてをり、金剛院の名はふさわしい観音に思えてなりません。

悲心観音のお立ちになる境内は数千坪。年代を経た寺院のお祀りしてある仏像一つ一つが宝であることを信じてをります。観音様の移転を決めてから、「悲心観世音開眼法要記念投句奉納」の構想が普現住職よりもたらされました。俳句の吟行地としても最適の場所であることは、数百年の樹木が物語っております。普現住職とは古くからの知己であり、意見の一致に依り協賛を約し、実行に及んだ次第であります。

さて、最後の投句は七十五人で三百句集まり、入選は十五句となり、県内外からも参加され、天、地、人は、一等から三等とし、五客は客分として扱い、七客は特殊な句を秀作としました次第であります。

福井県俳句作家協会長
伊藤柏翠俳句記念館長
ホトトギス同人
山岸 世詩明

悲心観音Re開眼法要入選句集

選者:村上 雪 先生、山岸 世詩明 先生

天賞

新緑や悲心観音に会ふ縁

仙田希子(福井市

選評
新緑の又とな悲心観音開眼法要。この様な良き日に合うえにしは、どこの世界にもない好日をめた句である。

地賞

御ン慈悲の観音像につばめ舞ふ

高橋朋子(鯖江市)

選評
悲心観世音さまの法要の中に、つばめたちが舞って祝福をしている情景が目に焼き付いている客観的写生句でもある。

人賞

風薫る悲心観音永久とこしえ

滝本三和子(神奈川県小田原市)

選評
永久とこしえに置かれる金色の観音像に風が香ることを薫風が吹き寄せ、彼の世と現世うつしよたたえていると思われる句である。


五客

観世音開眼法要みどりの日

山岸富子(鯖江市

深草に観音様の舞ひおりて

幡生啓子(福井市)

白牡丹一花仏足石の辺に

伊藤英美子(越前市)

子も拝む観音様に春の風

関本邦夫(越前市)

練行の稚児に幸あれ春の風

田野紀代実(鯖江市)

住職選

青葉映ゆ空に届くや観世音

中村映美子(越前市)

開眼会蝶は虚空へ縺もつれゆく

中野由紀(越前市)

稚児の泣き払ふ涙や花衣

長谷川隆治(福井市)

悲心さま仰げば心の憂い消え

河合喜代子(越前市)

句としての選評は出来ませんが、悲心を詠まれた句を選びました。

中村氏、中野氏、観世音のおられる空に届けるのは、また、虚空へもつれゆくものは自分では超えられない悲心と見ました。

長谷川氏、稚児の涙に重ねるのは、自分でも気づかない自分の中の涙、悲心と見ました。

河合氏、仰ぐことは懺悔することと同意か。我が悲心を尊前に吐露する時、憂い消える。

(注)作品発表は選者が添削してあります。

あとがき

「春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえて冷しかりけり」
「峰の色谷の響きも 皆ながら 我が釈迦牟尼の声と姿と」

二句とも道元禅師の代表的な歌です。自然と共に有り、自然に学ぶ、深い禅の心を表していると云われます。また、高浜虚子師の句、

「一時は たとへ暑さに あえぐとも」「何事も たやすからずよ 菜間引くも」また、ある死刑囚の句、「この体 鬼と仏の相住める」「布団たたみ 雑巾しぼり 別れとす」など。

私は、このように表現された歌や句から学び励まされ続けて来ました。それは歌や俳句には力が有るということかと思います。

このたび、金剛院にお迎えした観音さまは、「悲心さま」と名付けられました。悲心は仏教を学び、仏道を歩む者にとって、最も大事な心と思っています。

でも、悲心を見つめることは難しく、また悲心を表現することは更に難しいことです。

今回、俳句を通して悲心を学びたいと思い、俳句にずぶの素人ではありますが、投句をお願いした次第です。果たして投句して下さる方がおられるかと心配しました。が、皆さんから予想以上の珠玉の投句を頂きました。有難うございます。賛同投句頂けたこと、感謝申し上げます。

選者の先生に選んで頂いた句、お一人一句、七十首余を、色紙に記しお分けさせて頂く事になりました。書き始めると、なぜか書く手が止まりません。ほとんどの方は、どのようなお方か存じ上げませんが、そのご生涯から生み出された一句一句に心を奪われてしまいました。

皆さんの句は今回の開眼法要の宝です。今回投句の発表表彰式は致しませんが、時間をかけて、何らかの形で披露してゆくつもりです。有難うございました。

山岸先生には村上先生共々、昔日のご縁を大事にして頂き、何から何までご指導頂きました。また選者として労を尽くして頂きました。御礼申し上げます。有難うございます。

また、実行委員の吉田さんには投句事務局として気持ちよく尽力頂きました。有難うございました。御礼申し上げます。

金剛院住職 諏訪普現 合掌
令和四年六月吉日