金剛悲心観世音さま

金剛悲心観世音さま

命名「金剛悲心観世音」由来

空に、とんびは輪を描き、つばめは颯爽と滑空する。境内ではラジオ体操の方々の談笑が弾みます。そんな様子を静かに見護られるかのように観音様は立たれました。明美な奥越六呂師の高原に立たれること三十年余、不思議なご縁。それが幾重にも重なり、その観音様は私の寺に移設されました。

三十年余前、観音尊焼失に遭遇、以来『観音様に逢いたい』と復興一途に?向き合ってきました。そして、人生終盤近くになり、今回の降って沸いたような観音様の移設、このような計らい、何事なのでしょう。移設にあたり、新たな命名をせねばなりません。

元のお名前は『六呂師観音』新たなお名前は、正式名『旧六呂師観音・金剛悲心観世音』少し長いので通称『金剛悲心観世音』と命名させて頂きました。その少し変わったお名前の命名由来と、そこに込めた思いを記させて頂きます。

長年拝まれた方々の願心と当金剛院の希望をあわせて

六呂師の名前は、残したい。最初に観音様を建立された方、長年拝まれた方々の願心、それを大事にしたく六呂師の名前を冠にしました。次の金剛は、言うまでもなく当金剛院の金剛です。寺の役員さんの希望でした。最初は手前味噌な名とも思いましたが…。金剛は、堅固な信仰を意味します。又、英語ではダイアモンドであり青銅製金箔貼り、三十年経ても色あせない光お姿を表しているようにも思えてきました。

「悲心」多くの方の悲しみを救い上げて頂きたいとの願いの名

そして悲心です。そんな暗い名前をなぜ?と思われる方も多いかと思います。でも私のたっての想いがあります。移設に当たり現在四百人を超える多くの方々から移設費用の応援を頂いています。その方々の話をお聞きする度に感じました。

それぞれの方々が、深い抗しきれない生き辛さ、深い悲しみを抱えておられ、辛さ悲しさを観音様に任せて、救われたいと願われるのです。そんな方々のお心を想い、悲心にこだわりました。耳慣れない名ですが、多くの方の悲しみを救い上げて頂きたいとの願いの名です。

悲心とは同悲なり。憐れみなり。まず自分の内なる悲心を見つめましょう。次に、他の人にも同様の悲心あるを理解しましょう。その心が観音様の真の慈悲の世界では。

再び『観音さまに逢いたい』

金剛悲心観世音様移設の経緯

世の中思わぬ色んな事があるもんですね。それも後から振り返って見ると、深い縁に繋がっていることに気付かされたりします。令和元年秋、解体業社の長谷川さんが来寺され『仏さんを貰って貰えませんか』と。何やらあげるなんて、怪しげな事と、防御が最初でした。

それでも度々来寺され、言葉を交わす中、そのお人柄に信頼を覚え始め、では一度見ておこうかなと思い、六〇キロほど離れた六呂師高原に足を運びました。美しい高原の一角にその観音様は立っておられました。

一目見て、金ぴかでこれは禅宗のお寺には相応しくないなあ。それでも、この縁を断ったら、などと思いながら引き受ける事に心は傾きました。そして長谷川さんの友人の花山さんも加わり、三人で話を重ねる内に、お二人の欲得を顧みない心に、もうお二人に任せていこうと思い、心がようやく決まりました。先の所有者との具体的な交渉には思いの外手間取り、長谷川さんの尽力在ればこそです。

クラウドファンディングで移設費用を募る

さて、問題は移設費用です。これは花山さんの、クラウドファンディングではとの提案で、疑心暗鬼の中ですがスタートできました。インターネットに弱い方には振込みの口座も開かれました。週一度位のペースで三人での打ち合わせが続きました。又、寺の役員さんとの協議も重ねられてきました。

現在四百五十名余の方々から応援を頂き、こんな展開になろうとは夢にも思えませんでした。もったな過ぎます。そのようにして、観音様移設と周辺整備の計画はどんどん膨らみました。

休憩所として八角堂の東屋

八角堂の東屋、これには驚きました。藤田社寺の社長さんと、休憩所があるといいなぁと話していたら、その場で四本柱の八角堂にしましょう。材料は会社の残り材でまかな得るでしょう。そして三日後に、設計はこれですと。

費用削減のためと、土台基礎は、社長さんと数人の宮大工さんが奮闘です。なんだかこんなのでいいのかと思う中、感じよく立ち上がりました。

藤田社寺さんは、焼失した首里城を手掛けた会社で、宮大工さん達、匠の集団です。どうぞ、その手の跡をご覧下さい。会社と私とは、三十年を越すお付き合いで、会社の中では私が一番の古株?です。

六呂師高原に在った観音尊前の階段石の再利用

観音さま周辺の石の多くは再利用です。六呂師高原に在った観音尊前の階段石は、前机石に変身。石の太鼓橋は祈りの橋として再び安置。長い六呂師観音と刻まれた石は裏に、金剛悲心観世音と新たな名を刻まれます。

とても全ては書き切れません。ゆっくり散策ください。

そうこうするうちに、お寺に不釣り合いと思った金ぴか色が、不思議になじんできてしまいました。

詳しい情報はクラウドファンディングのページで